雑文

言葉の意味(クライミング?スポート?フリー?)

2016/07/01

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人と話す、文章を書く時に自分が意図した事がきちんと相手に伝わるかどうかという事を良く考えます。例えば「クライミング」と言った時に僕が思っているクライミングと相手が思っているクライミングは果たして同じなのだろうかと。

ボルダリングジムで働いていて驚いたのが「クライミング経験はありますか?」という質問に対して「クライミングはしたことがありません。ボルダリングは数回。」というやり取りが一度ならず行われたこと。なんとクライミングという言葉はボルダリングを含まなくなりつつあるらしいです。ボルダリングジムで聞きたいことは「ボルダリング経験の有無」なので質問の仕方を変えたほうがスムーズですよね。

ついでにもう一つクライミングジムあるあるとしては「そこマッチで!」という指示が飛ばされてクライマーが「マッチってなに!!!」て聞き返すヤツ。気が付かずに専門用語を使っていると知らない人には通じないという事ですね。「そこは両手で!」と言ってあげた方が伝わりやすいです。とはいえ、専門用語を使えたほうがコミュニティにも馴染みやすいし、クライミング仲間も増やしやすいのでそこは別途おしえてあげましょう。

Facebookでクライミング界にとても詳しいお二人から色々コメントを頂きましたので末尾に追記しました正直、この追加部分の方がこの記事の本文よりも読む価値が高いです。(2016/2/26)

話がそれました。

僕が初めて”ボルダリング”ジムに行った8年前はむしろ"ボルダリング"という言葉の方がマイナーで"クライミング"という言葉の方が優勢だったように思うけれど、ここ数年ですっかり様変わりして、ボルダリングの方が圧倒的に優勢な事を思うとそれも致し方ないような。「クライミングジム」という看板は減っていく一方で「ボルダリングジム」という看板が増えていくのでしょうね。減っては行かないか。相対的に率が下がるだけで。いや、今ある"クライミングジム”という名前のボルダリング専門ジムが"ボルダリングジム"と看板をかけかえたら減ってしまうか。

言葉はナマモノだと思うので、正式な定義よりも世の中的にどういう意味で使われる事が多いのかという事だったり、言われた相手がその言葉をに対して思い描くものが何かという事の方が僕にとっては大切で、(もちろん正式な定義をないがしろにしていいと言っているわけではないですよ。念のため)同じ言葉を発しているからって同じモノを指しているとは限らないという事は常に考えなくてはならない。

フリークライミング、クライミング、リードクライミング、スポートルート、スポーツルート、トラッド、ボルダリング、スポーツクライミング

悩ましいのはこの辺りかなぁ。語尾が”クライミング”の時は行為そのものを指していて、語尾が"ルート"の時はルートの種類を指しているからそこもごっちゃにしてはいけないですね。リードクライミングを”しにいく”んであってリードクライミングを”登りに行く”わけじゃないし、トラッドルートを”登りに行く”んであってトラッドルート”しにいく”わけじゃない、こともないか。トラッドルートを”しにいく”は通じてしまう(笑

さて、行為に対して使われる言葉にまず限定すると、一番大きな括りがクライミング、次がフリークライミング・スポーツクライミング、さらに分かれてボルダリング・リードクライミング、スポートクライミング・トラッドクライミングという感じでしょうか。ここの括りは「フリークライミング&ボルダリング 佐川史佳 編著」(2015年6月発刊)のP11にわかりやすい図が載ってます。

ここで最もわかりにくいというか、僕が混乱していたのが「スポーツクライミング」と「スポートクライミング」。さらに僕はスポートルートという言い方をすることはあってもスポートクライミングとは言わないと思っていたので余計にややこしくなってしまっていた。

スポートクライミングについてちょっとネットを見てみると山と渓谷社のclimbing-netで北山真さんが書いている記事に載ってました。

次にスポートクライミングです。よくスポーツクライミングと書かれますが、これは英語的に間違い(複数ではありませんから)。フリークライミングは最近登場した言葉で、わかりやすく言えば「しっかりしたボルトが岩に打たれたスポートルートか、人工壁だけを登るクライミング」ということになります。

CLIMBING-net 北山真のクライミングなんでもQ&A 第1回より引用

英語的に間違い?というのがよくわからなかったので続けて「sport climbing」で検索してみたところwikipediaに記載がありました。wikipediaに独立した項目を持つほど一般的な言葉と言っていいでしょう。

Sport climbing is a form of rock climbing that relies on permanent anchors fixed to the rock, and bolts placed on rappel and/or with cordless power hammer drills for protection.

wikipedia Sport climbingより引用

そもそもsport climbingという行為があって、そうしたルートの事をさしてスポートルートと呼んでいるわけですね。

一方、最近目にすることが増えてきた「スポーツクライミング」。これって日本発祥で凄く若い言葉なんじゃないかと思うわけですが、日本山岳協会のホームページはいつのまにか「スポーツクライミング競技情報」「スポーツクライミングmenu」とスポーツクライミング押し。これ前からそうでしたっけ?

「スポーツクライミング」という単語で検索してみると、オリンピックに関連して使われることが多い様子。ついでに気になったのでgoogle trendで調べてみました。

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思ったよりも歴史がある言葉のようです。2008年の5月〜9月に突然使われて、その後断絶。何があったのか非常に気になる所ですが、2009年3月からは一定数利用されてますね。爆発的に増えているのが2015年9月。これはオリンピック関連でしょう。とまたついつい横道にそれてしまいました。

「スポーツクライミング」がどんな意味なのかという事ですね。少しネットで調べた限りではまだ特に何を指している言葉です!という説明が見当たりませんでした。おそらくインドアのボルダリング・リードクライミング・スピードクライミングを指した言葉なのではないかなぁという印象です。曖昧ですね。どなたかバシッと定義付けお願いします。

この先も数年であっという間にクライミング界を取り巻く情勢が変化していくでしょうから、それにともなって言葉もどんどん変わる可能性があります。アンテナ張り巡らして敏感に対応出来るようにしておきたいものです。

とただ長いだけで内容が薄い文章になってしまいました。お付き合い頂いた方はありがとうございます。ここ間違ってるよ!とか、なんかモヤッとするー!とかあったら遠慮なく絡んで下さい。というか教えて下さいお願いします。

2016年2月26日追記
Facebook上でクライミング界の歴史にとても詳しいお二人から直接コメントを頂きましたのでコチラにも掲載します。

Yukiyamaさん談

「スポーツクライミング」も「スポートクライミング」も日本では意味するところは同じです。が、海外ではsports climbingという言い方はしないので「スポートクライミング」が本来なら正しくなります。日本だと運動全般を指してスポーツ(sports)という単語の方が一般的で、スポート(sport)とはあまり言わないため、スポーツクライミングという、正確には間違った使い方が主流になっていると思います。海外だとsportという単数形で使うことの方が多く、sportsというと複数の競技がある運動会や競技会を指す単語になります。

さらに、スポート(ツ)クライミングはフリークライミングに含まれます。フリークライミングはエイドクライミングの対極として出てきた単語です。フリークライミングの中で、フリーソロ、スポート(ツ)、トラッド、ボルダリングに分かれます。

ワールドカップを主催しているIFSC(International Fedaration of Sport Climbing)という団体ができてしまいましたが、競技としてのスポート(ツ)クライミングという単語は全く別物です。ここがややこしくしている原因ですね。

スポート(ツ)クライミングには本来はボルダリングは含まれません。

ノースマウンテンさん談

スポートルートを登るのが、スポートクライミングです。スポートルートとはラペルボルトをプロテクションとするルートです。対語はトラッドルート。

ロクスノはこれまで基本どちらの場合も「スポートクライミング」でとおしてきたはずです。ただしオリンピック種目に「スポーツクライミング」で登録されたら、もはや従うしかないでしょうかね。個人的には「フリークライミング」という言葉に思い入れがあります。

というわけでややこしくしている原因はそもそもカタカナ的な問題というか、言語的にsport(スポート)という言葉が日本に定着しなかったというのが一つ目、競技としてスポート(ツ)クライミングという名称が定着してしまったというのが二つ目といったところでしょうか。ちなみに海外在住の方の談ではsport climbing = ロープでのクライミングという事のようです。

さらにtwitterで寄せられた情報によるとALEX EKINSという方が2011年のネット上の記事でsports climbing(スポーツクライミング)という単語を乱発しており、もう雰囲気で伝わればなんでもいいっしょ的な雰囲気です。

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