都岳連主催 第5回医科学研修会@明治大学
2016/07/01
明治大学の構内で行われた東京都山岳連盟競技部スポーツクライミング局主催「第5回医科学研修会」に参加してきました。通常は参加費がかかるところを東京都の国体選手は無料!ありがとうございました。
「クライマーなら知っておきたい栄養学・医学・運動学」というテーマで行われ、栄養学は杉浦克己先生(立教大学教授)、医学は六角智之先生(日本クライミング傷害研究会会長)、運動学は西谷善子先生(日本山岳協会競技部選手強化委員)と超豪華な面々による講演でした。通常の参加費は2000円?だったと思うのですが、安すぎて参加者から抗議があったそうです(笑)
机に向かっての座学なんて久しぶりすぎて、学生時代を思うに寝てしまわないかとても不安だったのですが、内容が面白すぎて寝るどころか眠気を感じる瞬間すらありませんでした。
どの講義も大枠での話でつっこんで聞きたい所は山程あって時間が足りなすぎ!今後も年に1回ではなく年数回の開催も検討されているとのことで一刻も早く次回の開催をよろしくお願いします。
一つ目の講演は「スポーツ選手の栄養」杉浦克己先生(立教大学教授)
クライマーをターゲットという話ではありませんでしたが、食事の内容を気にすることがいかに大切か、実際の選手の例なども出しつつのお話。1日の中でどうやって食事を摂るのか、1回の食事の中でどうやってバランスを高めていくのか。知識として知っている話ではありましたが説得力が違いますね。特に乳製品を重要視されているのが意外でした。気にしてみようかな。
また、運動が上達するのに練習が必要なように食事の選び方、1食の作り方も日々の練習が大切!バイキングで取ってくる食事の内容を毎回評価して考察したりと今は一流と呼ばれているような選手達もそうした時期があったり、今も栄養士の方と相談しつつ日々の食事を組み立てている方も多いそうです。
二つ目の講演は「2015年度クライミング傷害大規模調査報告」六角智之先生(日本クライミング傷害研究会会長)
日本各地のクライミングジム、クライミングチームを対象にして怪我(1回の何かで起きた症状)、障害(日々の積み重ねによって起きた症状)の調査を今年行ったそうで、その結果の報告と考察という感じでした。見せていただいたデータは論文執筆中とのことで公開出来ないそうですが、非常に興味深い内容でした。
怪我をして整形外科に行ったもののほとんど有効な話が得られず「安静に」と言われて不満を抱いた人は多いと思いですよね。指をこれほどまでに酷使するスポーツは他に無く、それゆえに独特の怪我が多いこと、まだほとんど研究がなされていないためにどういった怪我をしやすいのか、またその時どうやって治していくのかといった指針が確立されていない事がその背景にあるようです。
怪我をしにくいようにするポイントとしてやはり「適切な期間休養する事」がとても大切で登って疲れた後に通常の状態まで回復する期間は個人差があるのでどの程度休めば良いのかを自分自身で探る必要があるという事。もう一つコンディショニングとしてウォーミングアップと同じくクーリングダウンを行う事が挙げられていました。特にクーリングダウンはジムでお客さんを見ていてもほとんどの方がしていない(疲れきってそのまま帰ってしまう)ので5分でも10分でもいいのでストレッチや軽い登りをしてから帰るようにして欲しいですね。
ちなみに細かい話は省きますが長い間太いまま放っておいた指は休んでも戻らないそうで、これからは気にせず登って行きたいと思います(笑
3つめの講演は「保持力•保持持久力とクライミングパフォーマンス」〜測定値からトレーニング方針を探る〜西谷善子先生(日本山岳協会競技部選手強化委員)
という事でまずは保持持久力の測定を行いました!腕を伸ばした状態でロックリングスの一番下の穴に何秒ぶら下がれるかを計測します。
トレーニング方針をどうやって決めていくのか、というのが話の骨子で
・競技特性を知る
体力、技術、心理、その他のうちどの要素が最も必要なのか
・自分の現在の状態を知る
筋力に依存しているのか、技術力に依存しているのか
という要素から自分の目標を達成するためにはどこを強化する必要があるのかを考えることで効率的なトレーニングを行う事が出来るという事ですね。
仕事で良く耳にする話ですが、やはりスポーツのトレーニングでもPDCAサイクルが非常に大切!予想して、やってみて、考察して、記録する。突然適切なトレーニングを行える人がいるわけではなく、こうして日々考察していくことで徐々に自分にあった適切な方法が見つかっていくわけですね。トレーニング方法を考えるのもやはり日々の練習が大切で、TRY&ERRORなくして正解には辿りつけないのです。
また、六角先生と同じく西谷先生もクーリングダウンの必要性を強く主張されてました。10分だけでもストレッチして帰ることで翌日の疲労感やクライミングパフォーマンスが改善するそうですよ。早速取り入れたいですね!
自分の調子を計るためにアップの時は同じ動作をして同じルートを登る、という事はやっていたのですが、ロックリングスにぶら下がれる時間からもそうした調子を計る事が出来るというのは言われてみれば思いつかなかったのが不思議なぐらいで、取り入れていこうと思いました。
最後は日本唯一の準公式スピードウォールがある明治大学ならでは、スピードクライミング体験会!ついついリードクライミングの綺麗な登りになってしまってなかなか速度が上がらない方多数。もしかしたらリードの登りが染み付いていないボルダラーの方がスピード向きかもしれません。
まだまだ書きたいことは沢山あるのですが、素晴らしい時間、素晴らしい内容でした。主催していただいた東京都山岳連盟競技部スポーツクライミング局の皆様、講演してくださった皆様ありがとうございました。また是非よろしくお願いします!