mountaineering 富士山

[climbing] 富士登山 20090809

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去年登った時はこんなに素晴らしい景色を見せてくれて、自分の意思で登った初めての山、富士山。これをきっかけに他の山にも登るようになった。実際の所は、あまりの人の多さと山小屋の多さとイージーな登山道に絶望して他の山に行ったのだけれど(参照:八ヶ岳縦走(初日)。見習いたい人もいれば、あーなっちゃいけないと思う人もいる、という感じ。

富士山に登りたいと思っている人は多い。ツアー会社に行けば山のように富士登山ツアーの企画が出ているだろう(僕は行ったことが無いので知らない)。

初めて山に登ろうと思った時、まず周りの人や、ネットや、TVや本から情報を手に入れようとする。そこで直面するのが、山の事を良く知らずに行くと危険だよ、危ない場所なんだよ、という事。これはもちろん本当だ。普段歩いている街の中に比べたら、道は親切じゃないし、コンビニも無い。

だからツアーに頼って、経験者と一緒に行こうと思うんだろうけれど、これは本当に安全なのかな。大人数で動くということは、行動が鈍くなることを意味する。自分のペースで動くことが出来ないのは思いのほか消耗する。また、正常な判断が行えなくなる。天気が悪い中、強引に進みたい人もいれば、少しでも天気が悪かったら帰りたい人もいる。

僕が1人で山に行くのは協調性が無いせいですけれど。

さて、今回は友達を1人連れて行く事に。他にも数人登りたがっていた人はいたのだけれど、結局2人での登山。同行者は中学から付き合いのあるY田。完全に気を使わない相手なので、登山のパートナーとしてはやりやすい。一番オーソドックスな吉田口からの登山です。

朝10時に東京を出発して一路富士山へ。朝からそれほど天気は良くなかったのだけれど、富士山の麓の駐車場に車を停めた時に親父から天候注意を促すメールが来た。「熱帯低気圧が台風に変わりそうだから気をつけて」

台風に変わったら完全にアウトだなー、と思いつつバスで五合目に向かう。去年の反省を生かして、今年は駐車場に行く前に食料等は買い込んでいたので、ここでは簡単な腹ごしらえのみ。あ、去年食べ損ねた富士山メロンパンを食べた。

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今年は撮り損ねたので、写真は去年の。
見た瞬間にY田が残念な感じとか即否定していたが、焼きたてのメロンパンはサクサクのフワフワで最高においしかった。食べさせたら評価が180度逆転した。いつものことだ。

登山の日程は去年と同じ時期だったと思ったが、格段に混んでいるように感じた(去年は8月15日に登った)。もしかしたら、直前に人気の無い北アルプスにいたからかもしれない。

去年の同行者に比べると非常にやる気があって、ともすれば僕よりも速いスピードで登っていくY田。あまり眺めが良くないのが残念だったが、道のりは非常に順調で、3時頃には7合目の花小屋に到着していた。

吉田口の登山道は花小屋の直前から8合目辺りまで、ちょっとした岩場になっている。それまで人2人は悠々と歩くことが出来る幅の道から急に岩場になるものだから、当然そこで渋滞が発生する。山小屋の予約をしていなかった僕にとって、この人数は少し予想を超えていて、花小屋は通過したものの、次の日の出館で仮眠することとした。

2名だったので、あっさりと受け入れてもらうことが出来た。山小屋の事情はあまりわからないけれど、あまり人数が多くなると飛び入りはちょっと大変な気がする。

到着してから夕食まで、1時間半ほど時間があったので、外を眺めていたらそれまでガスっていた視界がふっと開けた。雲の事はあまり詳しく知らないけれど、高度2000mぐらいにある雲が主に雨を降らせているような気がする。その雲が山にぶつかって登ってくるとその山では雨が降る。4000mを越える位置にある雲からはあまり雨降らないんじゃないかな。台風とかは別かもしれないけれど。

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暇だったので、iphoneで戦闘力を計測したり、口から雲を出したりして遊んでいた。やはり全身を撮影すると戦闘力が跳ね上がる。会社の同僚のNさんは座っている状態で戦闘力数十万だったので、やはりあの人は凄い。

夕食はカレー。槍ヶ岳山荘、北穂高山荘でとても不思議だったのが、味噌汁とご飯のおかわりが自由だったこと。山の上で水分や食料が貴重なのは変わらないと思うんだけどな。ヘリが止まれるかどうか、というのも大きいのだろうか。

食事を済ませたら、仮眠。ここからは夜間行軍になるので写真は無い。

元々の予定は22時頃まで仮眠をして、出発予定だったのだが、20時に目が覚めてしまい、囲炉裏端で山小屋のおじさんの話を聞いていたところ、混雑して渋滞の中登るよりも、自分のペースで動ける今時分から登り始めちゃった方が、汗もかきにくいし、疲れないから良いとのこと。そこで、Y田と相談をして予定を早めることにした。

その時おじさんから、「ポツリ、ときたら弱まることは無いからすぐに雨具を出しなさい」というアドバイスをもらったことは後で凄く役立つことになった。

さすがに、20時過ぎに登り始めている人は少なく、僕とY田は順調に高度を上げていった。特に、7合目からは岩場が続いているので、高度を稼ぐことが出来て良い。折り返しの砂利道はいくら進んでも思ったより進んでいないものだ。

と、八合目の太子館に到着した頃にポツリと雨が降り出した。あわてて雨具を出していたら、ほどなく本降りに。すぐに出せるようにしていたので、特に荷物がぬれたりして困ることはなかったのだが、横にいるカップルが街着同然の格好の上、靴はスニーカーで特に雨具を出す様子も無い。

男「やっべー、雨ふるとか言ってなかったじゃん!」
女「どうしよっかー」
男「もういっちゃえばいいんじゃん?」

とか詳細まで覚えてないけど、装備も何も無いし、どうしようもないからとりあえず進もうという結論を出したように見えたので、声をかける。やはり、レインウェア無し、靴はスニーカー、山小屋に泊まる予定も無しとのこと。しかも一度目の前の太子館に聞いたのだが、無理そうだったという。

さすがにこの2人がこのまま上に行っても大変そうなので、太子館のスタッフに確認したところ、入れるという。うーん、なんでだろ?まぁ、良くわからないけれどその2人をとりあえず太子館につっこんでから、僕とY田は登山を再開。

しかし、一度降りだした雨は時折小雨になるものの、風も出てきて弱まる様子は全く無い。僕は北アルプスでの反省から、きちんと水をはじくレインウェアを持ってきたのだが、Y田のレインウェアは水を吸って大変との事。しかも、ヘッドライトが無い。これ以上は無理かもなー、と思いながら少しづつ先に進んだ。

山小屋に着くたびに休憩を入れながらも、特に限界を迎えること無く白雲荘まで到着。と、ここにきて一段と雨が強くなってきた。僕らが到着した直後に40人近いツアー客が到着し、彼らもどうやら上にいくか悩んでいる様子。

山小屋のねーちゃんも出てきて、ちょっともう引き返した方がいいんじゃないかという雰囲気。詳しい話を聞いてみると、どうやら本当に台風が来ていて、昼頃が本降りだという話。御来光は絶望的だなー、と思いながらも折角きたんだし山頂まで行かせてあげたいとも思う。

そんな思いを戦わせながらモヤモヤしていると、どうやらツアーは先に進むらしい。添乗員を捕まえて話を聞いてみると、次までは進んでからお客さんを説得して降りるつもりだとか。それなら、僕らも一緒について行っちゃえばいいんじゃない?と進む側の意見が優勢になる。

この発想、今考えると実に危険だ。色々な人が入り混じってるツアーが先に進むんだから、きっと大丈夫。なんの根拠も無い。もちろん、自分達の装備や体力を考えていたつもりなのだが、専属のガイドがいるツアー客が進むんだから、というのは安心要素でもなんでもないはずだ。

その時、登っている際によく見かけていた3人組が引き返してきて、白雲荘のねーちゃんに降りる方法を尋ね始めた。話を聞いているとどうやら、先に進もうとしたのだが、道がグズグズで進めたものではないとのこと。渡りに船とばかりに一緒に下まで行くことを提案。OK!

僕らは下山する方向に進むことが出来た。どちらが正しかったのかはわからないけれど、それなりの満足感を2人とも得て、今生きているので、ここで降りる判断をして正解だったと思う。

同行することになった3人組は男が1人、女2人という構成。いつのまにか、僕が先頭、その人がしんがりという構図が出来上がっていた。

下山している間も、絶え間なく雨は降り続ける。ふとした拍子にふきつける突風もだんだんと勢いを増している。口々に、下りてきてよかった、登るより圧倒的に楽、と言いながらの下山だった。実際、かなりゆっくりとしたペースではあったし、高さが下がることで気温も上がっていたため、気持ち的にも体力的にも非常に楽だった。

途中、ところどころで休憩を入れていたのだが、東洋館のトイレに入ったときには驚いた。大勢の登山者がそこでビバークしていたのだ。皆、一様に疲れた顔をしており、途方にくれている様子だった。

僕らも降りた後のあてがあったわけじゃない。とにかく五合目まで降りてしまえばなんとでもなるだろう、上にいるよりは安全だろう、という希望にすがって降りているのだ。同行の3人組に宿泊先を訪ねたら、なんと同じ日の出荘だった。そこで、とりあえず日の出荘を目指すことになった。

7合目になり、山小屋の数が増えてからは足取りも軽く、皆岩場に慣れてきていたため、順調に進むことが出来た。それでも、おそらく皆が考えている事は、このまま下りてもどこで雨風をしのいだらいいのだろうか、という1点に尽きただろう。

それだけに、日の出荘で同じように引き返してきた人たちが囲炉裏にあたっているのを見たときは嬉しかった。どうやら、宿泊者が引き返してきたときに受け入れているらしい。

中に入って囲炉裏にあたったときの安堵感は最高だった。

夜中の1時頃に到着し、ここで6時まで過ごしたのだが、同じ状況を共有した囲炉裏端の空気がとても穏やかで、後から入ってきた人たちに暖かい場所を譲ったり、食べ物を分けあったりしながらの避難となった。まぁ、僕は下山時から同行していたH川さんとビール開けてもりあがってたんですけれど。

普段この時間は、目の前を通り過ぎる登山客への販売で忙しいか、登る人が尽きて暇かのどちらかだろう。小屋のニーちゃんたちが、珍しいこの状況でテンションを上げており、色々と小ネタを披露してきてあっという間に5時間は過ぎた。(上の写真は少し見にくいが、左足に「匂います」右足に「○←GORE-TEX」と書いてある。)


朝になって下山を始めたら、6合目についたあたりでなんと晴れ間が見えてきた。御来光が見えるような時間ではそもそも無かったんだけれど、なにも下りたときに晴れなくてもねぇ。ほんと山ツンデレ。


挙句、虹まで出たりして。また来てね、と言わんばかり。

五合目では、駐車場まで輸送する大量のバスが待ち構えていて、特にロス無く下山することが出来た。どうやら、ツアーの人たちは3時間ぐらい待ちぼうけだったらしい・・・・。

そこからは温泉に入って、蕎麦を食って一路東京へ。登頂することは出来なかったけれど、貴重な時間を過ごすことが出来たので、僕としては登頂よりも価値のある富士登山でした。

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