2015秋国内ツアー sport 備中

2015秋国内ツアー パート7 棲龍門5.13c/d完登!(岡山 備中羽山 DAY6)

2016/07/01

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いよいよやってきた決戦DAY!秀さんと佐千は前日完全レストで準備万端。2人とも朝からアップに余念がありません。

「AOZORA(5.14b)」のラインはかなり早くから日が当たり始めて一番遅くまで陰らないためトライ時間が限られます。11時には日が当たり始めて15時ぐらいまで陰らず(10月25日頃の話)、日があたっているとかなりヌメるようです(僕がやっていた「門前払い(5.13b)」、「棲龍門(5.13c/d)」のラインは日が当たるタイミングが短くてわりと一日中トライ出来る)。これまではわりと朝のんびり岩場に向かっていたのですが、実は最もコンディション良いのって朝一じゃない!?って事で早い時間から岩場に向かいました。

僕はなんだか朝から体が重く、岩場についてもあまり登る気にならなかったので走ったり筋トレしたり、ダラダラしたりとのんびりムード。今回のツアーで試したことの一つがコレ。「登りたくなるまで登らない」。登りたくない時は心と体の準備ができていない時。外で登れる時間は限られるので勿体無い!という思いも強いのですが、準備が出来たら自然と登りたくなると信じて焦らないようにしました。

登っている人を眺めたり、自分のトライ中の課題を頭のなかで登ったり、筋トレしたり、軽く走ったりと心と体の準備を進めることに専念。流れに身を任せつつ少し意図的に流れを作る感じですかね。そのままやる気出なかったらそれはそれで仕方がないかなーと(笑)意外と急に登れる気になってきた!っていう時が来ますね。

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前日完全レストの秀さん、朝一できっちり「AOZORA (5.14b)」 をRP!!前回も非常に惜しかったのですが、今回は最後までかなり安定していて力強かったー。おめでとうございます。佐千は残念ながら完登ならず。かなり惜しかったように見えましたが、やはり相当難しいのですね。

僕は結局いつも岩場につくぐらいの時間になったら心と体が目覚めてきて、むしろ早く本気トライしたいような気持ちに。アップのために「発情期(5.12a)」に取り付いたら気持ちがもっと先に行きたがるのでそのまま「棲龍門(5.13c/d)」に突入。いい雰囲気で核心までたどり着いたのですが、核心を数手進むうちにアップ不足を感じたので無理せずテンション。とはいえその後も1テンでトップアウト出来たのでいい感触です。

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日中はかなり気温も上がってくるのでレスト時間で羽山のすぐ近くにある天龍エリアへ行ってきました。

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トンネル脇に車を止めて整備された遊歩道を下っていくと素晴らしい雰囲気。自然の生命力が満ち溢れていて、思わず深呼吸してしまうような。その場に居るだけで元気がもらえるような場所でした。

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そんな場所にそそり立つ岩壁!

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社の裏にはさらに大きな岩壁!ところどころボルトが打ってあるのですが、最も大きな部分は傾斜が強すぎてよほどしっかりしたホールドがないと登る事は難しそう。

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そして始まるオブザベタイム。
佐千「あ、あそこ行けそうじゃないですか?」

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秀さん「どこどこ?」
佐千「あそこの穴のとこの・・」
秀さん「あー、行けるね。その後はどうかなー」

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佐千・秀さん「うーん、どうだろう」
という会話がなされていたのかどうかは知りませんが、奇跡のシンクロ。流石です。

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その周囲をさらに探索しているとヤマドリ?の尾羽根と羽毛が飛び散っている場所が!喧嘩したのかはたまた襲われたのか。血も肉もなかったから羽の持ち主は生きてるような気がします。

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奥には岩壁を流れてくる滝が見えたり

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ゴルジュが形成されていたりと沢登りも気持ちよさそう。

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少し戻って上部に移動するとさらにこんな岩壁も!凄い凄いと興奮して僕は1人でヤブをかき分け斜面をよじ登りと奥に行き過ぎて帰り道がわからなくなってしまい、しったかぶって「こういう時は上に行ったほうがいいんだよ」とさらに奥に進んで事態を悪化させ、遭難の二文字が頭にちらつき始めましたが心を落ちつけて下降路を探ったところなんとか元の岩壁の端っこに到達。胸をなでおろしました。

ヤブが濃いと斜面が全く見えなくてほんのちょっと下が断崖絶壁のように見えてなかなか下る事ができず、改めて自然を舐めたらいけないと実感。こうしてサバイバルスキルが磨かれていくわけですね(笑

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戻ったらちょうどよい頃合い。一息ついて「棲龍門 (5.13c/d)」の完登狙いトライ。ここからノリノリで書いてるので長いです。細かい話に興味が無い方は飛ばしてしまって下さい。これを読んでから動画を見るとより面白いかもしれません(笑

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動画 1分7秒頃から核心部分の一連のムーブスタート
テンポよく下部をこなして核心に到達。核心を1手すすめる度に余裕が失われていく。

動画 2分6秒
核心前半の最後の1手(ハング下で足を大きく広げて左手を付け根のコルネに飛ばす)もきっちり止めてレストポイントへ。フレッシュだと余裕でレスト出来るこの場所で左手をほんの数回シェイクするので精一杯。

動画 2分33秒
すぐに左手を進めて右足ヒール、右手レストの体勢に入る。このポイントもフレッシュならゆっくりしてられるんですが、今にも左手のだれたカチが抜けそうですぐ先に進みたくなる。しかし、1便前の反省を活かして必死で抑えこんで右手を一振り、ふた振り。

動画 2分41秒
限界まで耐えて後半核心の1手目のアンダー。前回落ちたこのポイントを気合で突破。左手、右手と進めてクリップポイントに到達。

この核心の途中にあるクリップは完登時に飛ばす人が多いという話は聞いていて、そういう場合の事も想像はしていたんですが、門前払いもクリップしての完登だったし、今まで一度も飛ばしたことが無かったので完登出来る時はクリップする余裕ぐらいあるから完登出来るんだろうな、と思ってました。この時までは。

動画 2分50秒
右手がホールドを握った瞬間、クリップする事は無理だと悟り潔くクリップを諦めて次の1手を止めるために足を動かす。足もしっかり置けた!この1手分のエネルギーは残ってる!ホールドも思ったより近く見える!深いクロスで左手を出す!とま・・・・りきってない!

動画 2分56秒
ギリギリのところで良いところまで届かずもじもじと持ち直す。右足はわりとスメアに近い状態なので足が滑る恐怖を必死で抑えこんで左手に集中する。持てた!後は最終レストポイントまで2手!しっかりと足をあげてレストポイントに到達。

動画 3分13秒〜4分5秒
レストポイントに到達して一息つきつつクリップ。進行方向に目を向けると人が!一声かけるも全く余裕がない様子に相手も本気トライの最中であることに気づく。この時まで「林京(5.13d)」とラインがかぶっていることを全く知らなかった。降りてから周りの人もそんな反応だったのでめったに無いことなのだろう。

自分がいる場所もこのルート最大のレストポイント。横引きのホールドだが、手がすっぽり入るようなガバ。足が若干甘いものの何分だって耐えられる場所だ。いつ動けるか全く予想がつかないが気持ちを切り替えてひたすら耐える。いったい何分レストしているのか、時間の感覚は全く無い。腕の張りこそないものの疲労感が大きい。次第に足、尻の疲労がでかくなり少しスタンスを変えたりして下半身も疲労を抜く。諦めて楽になってしまったらいいと何度も誘惑が襲ってくる。その度にここまで来て諦めるのは絶対嫌だと自然と気持ちが奮い立つ。

撮影出来ている範囲で5分以上のレスト。実際10分近かったのではないだろうか。

突然目の前のクライマーが登り始めた。ようやく進める。はやる気持ちをじっとこらえて彼が安全圏まで登るまでもうひと踏ん張り。

動画 4分5秒
クライミング再開。ホールドのかかりこそ良いもののアンダーだったりサイドだったりとバランスの悪い向きでさらにスタンスが悪い。油断したらいつだって落ちられるようなパート。集中して決めていた手順通りに必死で手を動かす。

動画 4分20秒
プチハングを回りこんで棚の上のホールドを右手で保持。少し手を伸ばせばガバがあるのはわかっているのだがどうしてもそこまで手を伸ばすことが出来ない。急遽手順を変更して先に左手を伸ばした。

動画 4分36秒
左手で少し甘いスローパーを抑えて改めて右手をガバに飛ばす。もう落ちない。足を送って体を切り返し終了点へ。

動画 4分50秒
完登。スタンスもいいしホールドも良くて落ちる要素は全く無いのだが、クリップで手間取る。動画に入っていた「入って」という声がとても嬉しい。
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途中レストが長すぎて10倍速になってます。

クリップをとばして核心最後の1手を止めたのがもちろんこの登りのハイライトだし、あの時の感覚がこれからとっても僕を強くしてくれるだろうと思う。ただ、このクライミングを思い出す時に一番最初に出てくるのは長い長いレストだろうな(笑

佐千からの「もっと速く登れないんですか?」という一言からこのルートの印象が激変、一気に完登に近づいた。発情期からのトラバース部分のムーブは自分で作ったムーブではロスが大きくてTさんに細かく教えてもらった。門前払いも含めてムーブが固まっている人たちがたくさん居て登りを見ることが出来た。自分一人の力ではこの短期間に完登することはとても出来なかった。

「棲龍門(5.13c/d)」というルートは稲垣智洋さんという方が3年かけて初登したそうだ。しかもこの時羽山に登りに来ていて挨拶することが出来た。それもまたとても嬉しかった。これもまた生涯忘れない一本になると思います。今回のツアーは色々と人生のターニングポイントになりそうです。

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先日中原栄君が初登したばかりの「AOZORA ダイレクト」。栄君のライン取りはとんでもなく悪いみたいですが、佐千が簡単ムーブを発見してしまいモヤッと完登。

それについてはFacebook上で表明しているのでそちらを引用。

先日行ってきた岡山ツアーで初登したRegressionと再登したAozora Directについて、ラインやグレードなど、もう少し詳しく記しておこうと思います。Regression5.14dは林京5.13dの核心後、新しく打ったボルトの...

Posted by Sachi Amma on 2015年11月6日

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朝1でAOZORAを完登した秀さんは念願の「空知(5.14d)」との戦いを再開。この日に東京に帰るはずだったのですが、終電の時刻をリミットブレイクして真っ暗になっても「空知 (5.14d)」との死闘を繰り広げる秀さん。カッコ良かった。

書きたいことが多すぎてめちゃくちゃ長くなってしまった。ここまで読んで下さった方ありがとうございます。このツアー記録もあと少し。岡山にあと2日滞在したのでそれについてが1つ、栃木カップでのセットの話が1つ、岡山での宿の話が1つ、ツアー中のケアや食生活についての記事が1つ、とあと4つほど国内ツアーで書いていこうと思ってますので暇な時にでも読んでもらえたら嬉しいです。

さてさて、岡山にたどり着いた時になんとなくイメージしていた「門前払い(5.13b)」を登って、「棲龍門(5.13c/d)」を登って、「空(5.14b)」までたどり着けたら結構凄いなーというプラン、なんと実現してしまいました。あとは残り2日間全力でソラと戦いたいと思います!

記録
day6
1便目 棲龍門 5.13c/d アップのつもりで発情期。のはずが良い雰囲気でそのまま続行。核心部で体の重さを感じて無理せずテンション。ワンテン。
2便目 棲龍門 5.13c/d 午前中の良い状態のうちに。感触はとても良かったものの油断しすぎて核心の左手飛ばしでフォール。
3便目 棲龍門 5.13c/d 14時前に出した。後半核心の1手目のアンダーまでたどり着くも足を上げきれずフォール。
4便目 棲龍門 5.13c/d 16時頃に最終便。完登

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