【小川山】イムジン河(5.11c/d)にオンサイトトライしてきた
岡村ガイドのお誘いでクラパというイベントに登攀担当として参加してきました。
その際幸運にも「イムジン河(5.11c/d)」のオンサイトトライをする機会に恵まれたので主にそのお話。
イムジン河は小川山を代表する名クラシックルートの1つで、かねてからトライしたいと思っていたルート。
僕にとってそうしたルートというのは何はともあれオンサイトでの完登を狙いたいルートで、実はイムジン河を自分の目で見るのは今回が初めてだった。
CLIFFの魅惑のトラッド 小川山 編に「小川山クラシックの中にあっても特に格調高い一本」と記載があったり
新版 関東周辺の岩場(菊地敏之著)に「歴史的にも重要な位置づけを持った、小川山を代表するクラック」と書いてあったり
このルートの素晴らしさを称える文章には枚挙にいとまがない、そんなルートです。
1982年にかの池田功さんが初登、僕が生まれた1年後に登られたルートですね。感謝。
この日は最初親指岩で小川山レイバック(5.9+)を2度トライ、1度目は7年ぶり?ぐらいのクラックにかなり緊張したものの、2度目にはジャミングの感覚、自分でカムを決めて登る緊張感を思い出し、かなりスムーズに登れた事で気を良くして「イムジン河にオンサイトトライ、今日やったるか!!」なんていう気持ちになっていた。
近づくにつれてはっきりとしてくる、写真で見たあの憧れの壁。かっこいい、登りたい。欲求が掻き立てられる。
しかし、改めて間近で登攀対象として見るとそのクラックの細さ、手がかりの希薄さ、そして何よりプロテクションをすべて自分でとらなければならないという事実に圧倒され、トライする気持ちが萎えてしまう。
とはいえこのルートはぜひとも登りたいし、クラック離れが著しい僕がこのルートにトライ、ましてオンサイトでトライをする機会はなかなか作れないし、でも怪我をするわけにも、もちろん命を落とすわけにもいかないし、と岩の前でしばし葛藤。
やっぱりこれは危険すぎる、出直すべきだ、予期プレ登ってよしとしよう、と気持ちを落ち着けた矢先に「Hさんこれからイムジンの方に行くそうですよ」と天の声。
Hさんというのは今回の同行メンバーの1人で数年前にイムジン河を完登したという女性。
改めて、とりあえずトライしよう!!と奮起するも、やはり自力で全てのプロテクションをチョイスするのははっきりいって不可能。というかそもそも僕は今回キャメロットの0.5以上しか持ってきてないし。
という事で間を取ってHさんに使用したプロテクションを全て教えてもらって&貸してもらって(感謝!!)からチャレンジということに。もうその時点でオンサイトトライでもなんでもないじゃん、というつっこみはまったくもってその通りなんですが、ルートの情報は細かく聞いたわけではないし、気持ちの上ではオンサイト、という事で・・・(笑)
とりあえず0ピン目とった方が良いよ、というアドバイスをいただきスタート直後の水平クラックに緑でプロテクションを取る。
さあ、出陣!
- - - - - - -
以降イムジン河のムーブ、プロテクションに関する話が出ます。
オンサイトトライしたい方はお気をつけください。
- - - - - - -
手の届くところでとりあえず安心のために、とナッツを決めて1手、2手、と登り始めたところ、なんと2手目で足滑らしてフォール、した瞬間に弾け飛ぶナッツ。驚く間もなくズザーとスラブを滑り落ち、途中で止まる僕。
0ピン目が無かったらと思うとゾッとしますね。
幸いシューズががっつり削れたのと左肘のあたりに擦り傷を作ったぐらいでノーダメージ。止めてくれたHさんには感謝してもしきれない。
ちょっとわかりにくいけれど、左足のソールががっつり削れてすりおろされている写真。
ちょっと最小限のプロテクションだと不安だねって事になって使えそうなサイズのやつは全部持たせてもらって再度出陣。
今度は出だしでとちる事もなく、順調に高度を上げていく。
順調、とは言っても落ちてないだけでどこもそれなりに必死だし、小さいサイズのカムやナッツが効いてるか超不安だったけれど、それでも1手ずつ着実に前進していく。
途中薄いダイクに立ち込むところでどうして良いかわからず、ヒールでの乗り込みみたいになってしまった。
今にも抜けそうなそのヒールがとても怖くて、その直前のプロテクションにもあまり自信が無くて、途中で降りたい気持ちになったけれど、もうクライムダウンする方が難しい体勢まで来てしまっているし、と気合を入れ直して必死で手を進めていく。(回収時に確認したけれど、一応効いていた)
そうこうするうちに最終パートに到達。
あとは左からのサイドカチを持って体を引き上げて、終了点直下の棚に手をのばすだけ。
直前に取ったプロテクションがあまりにも自信がなくて、何度か直そうとするも上手く直すことができず、かといって腕も足も気持ちも限界が近い。
このまま静的な荷重をかける分には安全だ。今テンションをかけてしまうか・・・、いや、テンションをかけるぐらいなら・・・!!と進むも体を引き上げて見た棚がとても悪いスローパーに見えてしまって心が折れてしまい、必死のクライムダウンからのテンション。
多分ほぼ終わったと思っていたビレイヤーHさんから「ええぇ!?」と驚きの声があがるも「もうほんと限界っす!無理っす!」とテンション。
僕の「気持ち的なオンサイトトライ」は失敗となりました。
その後改めて終了点まで登ったらあそこめちゃめちゃガバなのですね。がっくし。
- - - - - - -
ムーブの話はここまで
- - - - - - -
完登はならなかったけれど、今の自分があそこまで登ることができたというのはとても嬉しく、日々の練習が無駄ではなかったと思わせてくれた。
一方でやはりジムでの練習的な登りが多すぎて精神的に非常に未熟な部分が目立つトライだった。
肉体の話だけでなく、技術的にも、精神的にももっともっと高みを目指したい。
ちょっと今年中にスーパーイムジン登りたくなってしまったー!一緒に行ってくれる人求む。
夜は男性陣がいかんなく薪集め能力の高さを発揮して盛大に焚き火。隣でやっているCLIMB ONのトークショーを聞きに行ったりしつついろいろな話に花が咲いて楽しく夜は更けていきました。
翌日は皆でストリームサイドエリアへ。
途中アプローチに悩んだり渡渉ミスってお約束の川ぽちゃする人がいたりと楽しみつつ目的のエリアに到着。
小川山としては風変わりなフェースのカチのルートがたくさんで楽しかった。
僕は引き続きオンサイト力の弱さを発揮して
不如帰5.12b 2便
都忘れ5.12a OS
烏の腕豆5.12a 2便
と12台を楽しみました。
どのルートも楽しかったけれど、ルートとしては都忘れが一番トータルで充実の面白いルートでした。横に突き出てる岩頭を使いたくなっちゃうけど、そもそも限定のルートだし、使わないほうが断然楽しめますね。
烏の腕豆はトップまで行くと岩に立てるのでこちらも気持ちいい。登った3本の中では小川山的なスラブ立ち込み〜という感じが求められる小川山っぽいルートでした。
お誘いいただいた岡村ガイドはじめ、たくさんの方と一緒に登れてとても楽しかったです。
またどこかの岩場、ジムでお会いする事もあると思いますのでその時は一緒に登りましょう!
よろしくお願いします!
最近ジムで登るばかりで、それはそれで楽しいのだけれど、やっぱりこうして精神的にも限界ギリギリで戦う感じが楽しいのだよなーと改めて。肉体的な話だけでなく、精神的な部分も含めてクライミングを楽しんでいきたいですね。