アップの仕方
クライミングのアップは難しい(残念ながら僕は他に比較対象がない)。強度が強すぎても弱すぎても、短すぎても長すぎてもその効果は発揮されない(弱すぎて長すぎるという稀有なパターンならばかなり効果を発揮しそうだが、サラリーマンには難しい)。
適切な強度と長さがわかっても、ジムによって課題のタイプが違うし、長さも違うし、アップに使いたい壁は混んでいるかもしれないし、友達がいて話し始めてしまうかもしれないし、面白そうな課題をセッションしているかもしれない。
伊東さんに教えてもらったアップの方法を実践し始めてから一定のパフォーマンスで登れるようになってきたように思うので前に軽く書いたけれど、改めてまとめる。
ある程度通ったジムだったり、ある程度年数が経過したクライマーならどこのジム、岩場に行っても知り合いがいたりみたことがある人がいると思う。
ついつい、最近の近況をお互いに報告しあったり(最高に楽しい瞬間だ)、トライ中の課題に誘われたり(それは大抵ハードで面白そうな課題だ)してアップがおざなりになってしまう。
自分の自由意志に任せるとこのように楽しいことばかりを優先してしまうので明確なアップ量の指標として時間と課題の本数を決める。
僕の場合は(伊東さんに言われたそのままだが)
1. 10分間 8,7級程度のガバガバの課題をなるべく色々な角度で10本
2. 10分間 上半身のストレッチ
3. 10分間 1で登った課題(混んでたら他のでも)を出来るだけホールドを飛ばして登る 6本
4. 10分間 下半身のストレッチ
5. 10分間 2グレードぐらい上げてカチ系の課題を4本
6. 10分休む
※ルートの本数、グレードはPUMP2のボルダーで書いています。課題のタイプによって本数、グレードは変わってきます。
としている。ただ、これだとジムについてから登り始めるまで1時間かかってしまうので普段はストレッチの時間を5分間にしている。登っている間は人と話をするのは難しいが、ストレッチをしながらならば話が出来る。伊東さんなんかは10分区切ってずっと壁に張り付いているらしいが、混んでいる時間帯にしか行けないサラリーマンにとってそれを行うことは不可能なので課題をX本としている。
ポイントのその1は「ジムに到着したらなるべく早く壁に取り付く」事。自分のやりたい課題に挑戦出来る時間を最大化したいという意味ももちろんあるが、それ以上になるべく早くアップを行うことで調子の良い時間を長く作る事が出来る。
2つ目は「10分間使って課題を登る」事。登り始めてからの時間を確保する意味もあるので、5分で登り終わったからすぐに次のステップに行ってしまっては意味が薄れてしまう。ステップ1ならば1分に1つ、ステップ2ならば約1分半に1つの課題を登るようにする。
3つ目は「1つ1つの動作を集中して行う」事。アップだからといって雑なムーブをしてはいけない。アップで負荷が軽いからこそ、足を置く場所から体を動かす順番・ひねり、手の動かし方、指の力の入れ方、ホールドの持ち方・持つ場所まで神経を張り巡らせて丁寧に登る。この積み重ねが余裕が無い状況での適切な動きにつながる。
時間を区切る、本数を決めることで自分の中に定量的なはかりが出来てその日の体の調子が把握出来るようになるし、いつもの場所でなくてもアップに必要な運動量を確保することが出来るようになる。
その日のパフォーマンスを事前に計ることが出来る意味は大きい。また、アップの過不足による影響を受けないことも非常に大事だ。こうして初めて自分の能力の過不足、何故この課題が登れたのか、登れなかったのか。どんなムーブが得意、不得意なのかという部分に目を向けることが出来る。(アップが足りなかったかな?なんていう言い訳は出来なくなる)
あと、アップの時点で調子が把握出来ると出来るはずの課題が出来なくて無駄に凹む度合いを減らすことが出来る。
基本的には常に上記のアップを行なってからクライミングをするわけだが、これだけでは不十分な事がある。それはレスト明けで最高グレードにトライするような場合だ。そもそもレスト明けの一日目に本気トライをするな、という話もあるかもしれないが何日も連続で登る時間を作ることは難しい。レスト明けでは体に力を入れる動作に慣れていないため、最高グレードの課題にトライするといつもよりも重く、遠く感じるだろう。
その場合はさらに1時間ぐらいかけてマックス系のボルダー課題(指に来るタイプではなく、体幹で抑えて登るタイプの課題)を充分なインターバルをとって(できれはトライ毎に15分)行うことで解決すると思う。思う、というのは上記のアップでは不足していたという経験はあってもまだMAX系課題で起こしてから、という経験が無いのであくまでも僕の予想だからだ。
ここまで書いて、最近トライしている新しい12cが全然進捗しなくて凹んでいたんだけれど、ボルダー的なアップ無しにやってるから当たり前なのかも、と思いました。でも、一度落とした12cはもう通常のアップで充分登れる。クライミングは奥が深いなー。