TIPS メモ

カチが大嫌いだった

あのムーブが、あのホールドが、あの持ち方が、苦手。嫌い。

僕はいわゆるカチと呼ばれる指先で握り込んで持つ薄いホールドがつい最近まで(具体的には2014年の2月ぐらいまで)とても嫌いでした。まず指先が痛い。そして登った後に指の第二関節が痛くなる。さらに、無事に登れればいいけれど、すっぽぬけたりしたらめっちゃ痛い。指先がビーンでなる。猫パンチとかして手の甲側擦りむいたらもう最悪。そんなことばっかり考えているから持ちたくないし、実際カチが出てくるともう全然何も出来ない。力めない。

そんな感じで全力で握り込むようなホールドは避けて、なるべくスローパーやピンチといった大きめのホールドで構成された課題ばっかりやって来ました。セッションしててカチ課題とか出て来たら急に大人しくなっちゃってガンバしか言わない。
ルートとかをオブザベーションしててもカチが出て来た瞬間思考停止しちゃって「あー、悪そうだなー。あんなの持てないよー」ってだけ考えて先に行っちゃう。それぐらい嫌いだった。

でも、ある日を境に明らかにイメージが変わった。意外と持てる?あれ、大きく感じるぞ?指も痛くない!

そのある日何が起きたかというと、カチが強烈に持てる体験をした。
いわゆる成功体験だ。

色々あって体重が普段より5kgぐらい軽かったその日、1年ぐらい頑張ればあるいは登れるかもしれないな・・・と思っていたカチ主体の初段があっさり登れた。
そんなに体重が減っていて体調が良いはずもなく、体はだるくて重いのに、ホールドを持ったフィーリングがいつもと全く違っていた。「えっ?こんなに良いホールドがなんで持てなかったの?」って思うぐらい。体重が違うことでこんなにもホールドの感触が変わるという強烈な体験でもあった。今まで痛くて持つのも嫌だったホールドが、不思議なほど簡単に保持出来た。

その日からすごくカチが好きなったかというとそんなことはない。体重もその日よりは重くなっているし、カチを見るたびにやっぱり嫌だなーと思っていた。それでも、課題の中に出てくると「まぁ、意外と持てるんだよな」なんて前向きに考えられることが増えていった。指が痛いのは嫌だけど、持てるホールドなんだからなんとかしよう。この課題完登したい。ならあのホールドで頑張るしかない。大丈夫、この前は持てたじゃないか。

実際のところ体重が多少増えたところで持つことが出来たし、持てたらそれがまた自信に変わって行った。

なんだ、持てるじゃないか。

カチへの苦手意識を克服するチャンスだと思った僕はもうひとつ自分にある仕掛けをした。

カチを見るたびに「あ、嫌だな」「悪そう」ってネガティブな感情になってしまうことを改善するために、「あっ、悪そう!」って思ったら「こりゃヤバイね!」とか「キテるね!」とか「うわっ、これ止めたらめっちゃ楽しそう」とか、なんとなくノリの言い言葉を口から出すことにした。ついつい口から「わるそうだなー・・・」とか言っちゃう事もあったけど、そんな時は「最近カチ大好きだからなー!」って逆に大袈裟に言って自分の意識を上書きするようにした。周りからみたら完全に変なやつだ。

でも、そのかいあってか、以前のようにカチを見た瞬間思考停止するようなことは無くなった。それどころか、カチを冷静に見極めて意外と悪くないカチだな、とかこれは本当にやばいやつだな、とか判断出来るようになってきた。

僕がカチを持てない理由の大半はメンタルにあったのだろう。
嫌だ、痛い、出来ない。
そんな思いがカチに向かう力を奪っていた。

出来ると思う大抵のことは出来る。
出来ると思えれば、大抵の事は出来る。

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