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なんのためのチョークか。

いつ変わったのか、はたまた最初からそうだったのか。

僕は随分と長い間チョークというのは
「手の湿気を取り登りやすい状態を保つためのもの」
だと思っていた。

指が、手が汗ばむとホールドを保持しにくくなるため、それを防ぐ。またそうなっている状態から元の状態に戻す。
ノーマルの手の状態があって、それを向上させるのではなくマイナスになりにくくするためのもの。
それがチョーク。
そのように考えていたし、教えられたような気がする。

ただまぁ、実際問題として滑りを止める滑りにくい状態を作るために使っているので滑り止めではないのか?と言われたらなんだか反論に困るけれど「滑りやすい状態を作らないために使用する」ことと「滑りにくくするために使用する」ことは違うと思うのだ。
後者は間違いなく滑り止めだろうし、前者はいうなれば状態維持剤である。

ちょっと話はそれるけど、ブラッシングに関しても磨いたほうが持ちやすいと教えられたから登るために磨く。最初はそんなものだった気がする。
でも、これは滑り止めだとして教えられていたらホールドについているのをわざわざ落とすのはなぜ?となったかもしれない。

Krimp勤務時代はお客さんに
「手の湿気を取るものであって滑り止めではないのでつけすぎても滑りますよ」
と説明していた。
ただ、1年ぐらい経って説明の簡素化のために
「滑り止め的なものです」
というようになった。
「滑り止めではない」と言ってもなんだかうまく伝わらなかったからだ。

PD9が出てきた時に明確に「滑り止め」と銘打っているのを見て、え、滑り止めなの!?と思った覚えがある。
実際にこの商品は手にアルミナという物質を付与しているそうで、最初に使った時は衝撃を受けた。特に木製のラングにぶら下がるような時はチョークとは全く違ったものなのだと感じた。匂いがついているのも新鮮だった。
最近PD9をシューズに塗るとフリクションがアップするという話を聞いてやはり「滑り止め」なのだという思いを強くしている。

今Wikipediaを見て知ったのだけれど、野球ではロジンバッグは厳正に検査されたものを審判員が用意するそうだ。クライミングもそんな時代が来るかもしれない。というか今時点でそこのルール定義がなされていない事に疑問を感じる。実はされているのかな?後で調べてみよう。

そもそも、フリークライミングの一部であるわけでボルダリングで道具の介入は最小限に抑えるべきだというのが根本的な考え方だったと思うし、極力自分の力だ!と思える範囲で完登したいと思っている。なのでシューズにこだわり、チョークにこだわり完登を目指す事には少し疑問がある。

そういう意味で「滑り止め」を使う事は道具を使っている感覚が強い。

では靴はどうなのかと言われるとこれも明確に道具なのでなければ無いほうが良いのだと思うし、実際にそれを追求している人もいるにはいる(この間V17を初登して話題になっていましたね)けれど、実際問題シューズがなければジムで登れないし、そういうルールなのだと自分を納得させている。かのV17を裸足で登った御仁もジムでは基本的に靴を履いているとインタビューで答えていた。

だが、そこの追求に重きを置くようになってしまうのはなんだかなー、という話だ。
靴やチョークの追求に時間を割くよりも自己の鍛錬に時間を使いたい。

とかなんとか言いながらひっくり返して申し訳ないのだけれど、やっぱり僕も最近出てきているチョークや下地は気になるし、何かちょっと使ってもっともっと登れるようになるなら登りたいのが本音だ。

2017年年末〜2018年年始にかけてチョーク下地材を各種買い揃え、各社のチョークを揃えて何が良いのか色々と試してみた事がある。
その時はもうチョークの使い方や配合が悪いから持てないのか、自分が弱いから持てないのか、はたまた気候や岩の状態が悪いから持てないのかわけがわからなくなってしまい、もう考える事が嫌になって超オーソドックスなチョークが一つあれば良いという結論を出した。

人の指先の性質(ヌメり手なのか感想手なのか)や求める保持の感覚が一致するとは限らないため著名な人が肝いりで開発した商品でも僕にとって良いとは限らないという事を学んだ。

これについては追加でちょっと試した事があって、最近生徒さんと一緒にいくつかの液体チョークを試したところざっくり2つの派閥に分かれた。もしかしたらこれは自分によいチョークを探すための手がかりになるかもしれない。

1.マムートの液体チョーク・ベアールのピュアグリップが良いと感じるグループ
 粉だとグラスプを良いと感じる人達
2.Juncture Liquid Chalkが良いと感じるグループ
 粉だと東京粉末を良いと感じる人達

1のグループは乾燥手、2のグループは滑り手(といってもそれほどひどくはない)だった。
1のグループの人たちは2を使うと変化を感じないと言っていたのに対して
2のグループが1を使うとかえって持ちにくく感じると言っていたのが印象的。

一旦上記のような結論を出したものの、やっぱり色々と気になってしまい最近では東京粉末のRXを使って感激した。ただ、調子にのって使いまくると指皮がマッハでなくなるので注意。

add frictionはノーマルタイプを使って一度感動したのだけれど、今は使っても使わなくても余り変化を感じない。使い方が悪いのか他に原因があるのか・・・。リードだと特に逆にヌメりを感じてしまうので使っていない。

と色々御託を並べながら時に道を迷いながら楽しく登っている。
まるで人生の縮図だね!と強引にまとめて今回はこれでおしまい。

あ、最後に一つだけ。

僕はこれまでずーーーーーーーーーっと自分の保持力のなさがコンプレックスで、体勢が崩れて出した1手が指先力で止まるなんていう事はほとんど経験した事が無いのですが、「滑り止め」を使うことで指先の信頼が高まり、使っていない状態でもちょっと指先信じて動けるようになった事、良い保持の感覚を経験する事ができたのはすごく良い変化でした。

バカとハサミは使いよう、上手に使って自分を高めていきたいですね。

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