competition 第28回(2014) 長崎県県立大村高等学校山岳競技会場
第28回リード・ジャパンカップ長崎大会
長崎県県立大村高等学校山岳競技会場で行われた第28回リード・ジャパンカップ長崎大会に出場してきました。この大会は年に2つあるリードワールドカップの出場選手選考の対象となっている非常に重要な大会のうちの一つで、僕はこの一年間この大会を目標にトレーニングを積み上げてきました。
日本代表にはS、A、Bの3種類の枠があります。S・A代表に関しては前年度の世界大会の結果により選出され、B代表が二つの国内大会(リード・ジャパンカップ、日本選手権)から10名選出されます。
僕がワールドカップに出場するため、つまりB代表に選出されるにはリード・ジャパンカップ、日本選手権のいずれかの大会で5位以内に入る必要があります。正確には、上述した二つの大会には既に日本代表に選出されている選手も出場するため、そうした選手を除いて各大会の上位5名に入る事が日本代表のB代表に選出される条件です。
結果から言うと出場選手全76名中42位、予選敗退でした。
リザルトはコチラ
準決勝に出場するためには26位以内になる必要があり、そこから決勝に進出できる選手は8名です。
いろんな人の動画は記事の一番最後にまとめてあります。
良かったらご覧下さい。
自分についての詳細な感想は以下。
出場までの調整
以前はコンペの前日に何を食べていいのか、どれだけ飲んでいいのかわからなくなって妙にストレスを抱えたりしていたけれど、その点は色々と実験をして知識が増えてきたので安心して過ごすことが出来た。コンペ前の調整についてはかなりまとまってきているように思う。また、ハンディ体重計を長崎まで持っていったのも良かった。
前日に軽く登っておいたので当日の体の調子も上々。あんまり休みすぎても体が寝てて調子が悪いし、登りすぎても疲れて力が出ないし、難しいです。
オブザベについて
昨年のリード・ジャパンカップ同様にホールドをメモする作戦。ただ、絵を書くのに時間がかかりすぎてしまった。もうちょっとルートの絵を書く事に慣れておかないと結局ルートの特徴が全く捉えられず、アイソレーションルームに戻った時に全くどんなルートだったか頭に入っていないという事になる。その後色々な人に質問したり、ルートマップを元に話しあったりして全体像を把握するのだけれど、それにしても全くイメージがつかめていないというのはまずい。
今回で言うとルートマップを書き終わった時点で4分近く経過しており、そこから全体を見なおして残り時間1分。細かく想像する時間が足りなかった。
リード・ジャパンカップ予選 - 太田裕樹
自分の登りについて
全体の流れ、ホールドの特徴は頭に入れて予選スタート。出場順が近づいてくるにつれて多少固くなってしまったけれど、この程度の緊張はむしろしていた方が良いように思う。あんまりリラックスして力が抜けてしまうのも良くない。
競技開始後の40秒を使って最終チェック。全体としては頭に入っている通りだったが、知らないホールドが多くホールディングが想像できていないのが不安。
スタート直後は冷静だったように思う。しかし、知らないホールド、気持ちの悪い動きで段々と崩されてしまい、落ちる直前まで自分の中ではずーっと追い詰められたような気持ちになっていて余裕が無かった。ただ、動画で見直すとそれほど切羽詰まっている感じはしないし、気持ちだけが追い込まれてしまっていた。もう少し周りを見渡すような瞬間が作れたら良かった。
フォールした箇所について
フォールした部分は単に手順のミスとして片付けてはいけないように思う。フォールした場所は27+。つまり27手目を保持した後に28手目を取るのに有効なムーブを繰り出してフォールした。だが、このプラスぶんの1手は既に追い詰められて苦し紛れに出した1手、とはいえ28手目を本気で止めるつもりで出した1手だったし次の1手が絶対に止まらない、雑な1手を出したつもりはないけれど。
さて、こうしたパンプして指が開いてどうにもホールドが保持出来ない、という状況でもなく、進退極まった、というほど追い詰められた状況でもなく、「少し嫌な動き」を避けた結果、次の1手を取るには適さない形になってしまい、そこでやり直すことは考えられずにつっこんでフォールというケース、エラームーブで落ちてしまった事は多いように思う。そのまま進んでも次の1手が止まる可能性は低いことがわかっていたのに、止まることが出来ずに突き進んでしまった。
今回のケースを具体的に話すと、26,27でマッチするホールドは横長で中央と右端にティックマーク(保持しやすい場所を示すマーク)が付いていて、中央は凄く持ちにくく足を効かせればなんとか数秒耐えられる程度、右端はレスト出来る程度に持ちやすかった。セッターが想定した手順は左手で悪い中央を押さえ我慢しつつ、右手を右端に寄せてくる、その後左手を28手目に出すという手順(手順Aとする)。僕は左手で悪い中央部を押さえながら右手を寄せてくる動きを嫌がって左手を持ちやすい右端、右手で悪い中央部を押さえて28手目を取りに行った結果右手がこらえきれずにフォールした(手順Bとする)。
オブザベした時点では想定された通りの手順Aで登ろうと考えていたが、現場に来て中央部のあまりの悪さにビビって手順Bに変更してしまった。その後の選手の登りを見ているとほぼ全ての選手がその場所でホールドの悪さに戸惑い、ホールド全体(特にティックの付いている中央部と右端)を探るような動きをしている。探った後で再度手順Aを選択して突破を試みている。しかし、僕はその手順を選択することが出来なかった。
手順Aを選択した場合は27手目に右手を寄せてくる段階で落ちてしまったかもしれない。その1手を増やすためには確かに僕の選択は正しい。手順Bならば安全に27+までは持ち込むことが出来た。だが、28を取るためにはどうだったのか。これは明らかに手順Aを選択するべきだ。手順Bでも28を止めることは不可能ではないと思うがその可能性は低い。完登を目指したならば迷わず手順Aが選択出来なければいけない。
ただ、仮に27手目を止めるかどうかが進出ラインとなっていた場合この手順Bのチョイスは正しい。その1手があるかどうかで結果が大きく変わるのだから。
とはいえ僕はまだそんなレベルではない。エラームーブを選択してでも順位を上げることを目指す、その必死さも大事だとは思うが、多少自信が無くても正しいムーブで完登を目指して突破するだけの実力を付けなければいけない。エラームーブを選択して1手伸ばすよりも想定ムーブに自分をぶつけて実力を計ることの方が大事だろう。
実際に今回の大会の上位3名は皆予選は完登している。予選の結果を大きく覆した選手ももちろんいるにはいるが、概ね順当に実力が発揮し、結果に反映されている。予選強い選手は準決勝だって強いし決勝だって強い。
予選の結果について
通過ラインは30.5+。この0.5というのは手順としては想定していなかったホールド(スタンスとして設置されたホールド)が実際使われた場合に登場するらしい。今回で言うと30手目を左手で保持し31手目を右手で取るのが想定ムーブだったが31手目を左手で保持するために右手でスタンス(30.5手目)を保持したケースが多く見受けられた。
僕のフォールした箇所から31手目まで4手(僕は30.5手目を使わないムーブを想定していた)。近いようで遠い4手だ。
準決勝進出という点で考えると4手だが、決勝進出者の予選リザルトを見てみると波田君の36+を除いて残り7人は40+以上、うち3人が完登。この完登した3人は今大会の1位、2位、3位である。
そう考えると決勝進出者との間は13手。まだまだ遥かに遠い。そして、今回優勝を飾った松島選手でさえもワールドカップでは決勝進出を果たしていない。その上で戦い続ける安間選手の実力・・・と想像すると雲を突き抜けて遥か彼方まで続く切り立った崖を眺めるような気持ちになるが、その崖に探せばホールドがあることを僕は知っているし、物凄く難しいパートがあるにせよ地続きであると僕は信じている。一歩ずつ高みを目指そう。
その他
話はだいぶ変わるが、余裕の登りに見えた選手にそのルートの感想を求めると「結構悪かった」とか「危なかった」という感想が返ってくる事が多い。今までは皆謙遜してそうした発言をしているのだと思っていたが、実は謙遜だけでそう言っているわけではなく、ある部分では本当にそう思っているのではないかと最近考えている。
実際僕も「3級(5.12)なんて楽勝でしょう?」と人に聞かれたらいやいや、結構悪いやつも多いですからね、と答える。登っている所を見て「楽勝ですね」と声をかけられた時に「**とか苦戦しました」なんて言うことも多い。
他の人から見たらまるで楽勝で登っているように見えても本人が実は追い詰められていた、というグレード。決して落ちることはないけれど油断も出来ないようなグレード。コンペにおける強さというのはそうした部分が強く出てくるのだと思う。
打ち込み続けて落とした最高グレード、自分に相性が良かった高グレード課題。そうした部分ももちろん実力の一端を知るためには大事なことではあるが、こと”コンペ”での力を計るにはそれこそアップで何級登れますか?というようなベースの力で見るのが良いだろう。
僕はつい最高**段とかに惑わされがちで、誰かがあっちの有名課題を落としたとか、最高グレードを更新したとかいう話を聞いてはこのまま練習ばっかりしていていいんだろうか!?とグラグラしてしまうけれど、僕にとって本当に大事なことはそこではないんだな、多分。
翌年、または次の大会へ
体調管理について
最近の調整だと水分が少なすぎて体の怠さが出ているような気がする。どの程度まで絞ると良いのかは引き続き探ってベストパフォーマンスを発揮出来る状態を見つけること。
オブザベについて
ルート全体を記憶することが出来るのだからメモに頼らずオブザベに集中したほうが良い。また、双眼鏡の買い替えも検討するべき。非常に見やすくて良いのだけれど、ちょっと重すぎて使いづらい。
また、スタンスの見落としが目立つ。パン2以外のジムにも通ってオンサイト練習を定期的に行うこと。
登りについて
とにかくボルダー力のアップ、オンサイト能力のアップ。もう一度1年間積み上げる。
競技中の登りについて
当面はセッターが想定したムーブを読み解き、その想定通りに突破する力を上げる。
もちろん想定通りだと悪すぎてかえって難しくなってしまうようなケースもあることはある(意外と少なくない)けれど、裏道を見つける力は正面突破する力がついて、経験が増えてくればその後でも身につけられる力だろう。
多少悪くても正面からぶつかって突破する。真っ直ぐ。
その他撮影した動画
第28回リード・ジャパンカップ長崎大会 男子
男子準決勝 - 波田悠貴
男子準決勝 - 羽鎌田直人
男子準決勝 - 松島暁人
男子決勝 - 松島暁人
第28回リード・ジャパンカップ長崎大会 女子
女子予選 - 大澤咲子
女子準決勝 - 大澤咲子
女子決勝 - 大澤咲子