mountaineering 北アルプス

北アルプス3 下山


9/19
涸沢での一晩は北穂のテン場に比べると本当に快適で、グッスリと眠ることができた。ぐっすり眠れすぎたのと、昨日の夜のビールも手伝ってすっかり寝坊してしまい、テントから這い出ると間もなく涸沢からも太陽を見ることが出来た。

昨日の夜からずっと前穂の北尾根を登るかどうか悩んでいたのだが、出遅れたのでやめることにした。もし登るなら太陽が出る頃にはとうに取り付いていなければならない時間だ。もちろんそれだけが理由ではなくて、前穂は岩が脆くて非常に崩れやすいことや、10kg程度とはいえ荷物を全部しょってその脆い岩場を突破する自信がなかったこともある。

下山してから聞いた話だが、ちょうどともちゃんとけんたが前穂の北尾根を登っていて、後続で滑落があったとの事だった。自分だけでも怖いのに前後に人がいるなんて怖すぎる。冬の山にはまだあまり行ったことがない(夏もまだ全然だけど)けれどシンとした山が僕は好きだ。

さて、直接下山をすることに決めてからは気楽なものでのんびり準備して下り始めた。既に下りはじめている人たちも当然いたけれど、大半を追いぬきながら進んでいく。

下りには全く楽しみが無い、と思っていたけれど気持よく晴れた空の下で気楽に歩く道も悪くはなかった。行きに全く景色を楽しめなかった事もある。


しばらく歩くと中間地点の橋にたどり着いた。陽光の下で見ると予想通り一段と気持ちが良さそうな場所だった。特に疲れていなかったのでここは素通り。


さらに下ると右手側にどーんとそびえる屏風岩が見えた。想像していたよりもはるかに大きくて魅力的な岩壁だった。帰りの電車の中ではこの岩を登るルート解説を全部読み込んだ。誰か登っている人を探したけれど特に見当たらなかった。


下にも上にも途中にも草があるし、全然違う形をしているんだけどエルキャピタンを思い出して興奮した。こんなところを一人で登れないものだろうか。上高地に来るのは面倒だけれど、ヨセミテに行くよりはましだし。


その後は特に見るものも無く横尾に到着。横尾で荷物を下ろして一息いれて、あとは1つずつ進んだ。徳沢ではソフトクリームかブルーベリートーストか悩んでブルーベリートーストを食べた。結構うまかった。明神館についたときはそんなに疲れてなかったのでそのままかっぱ橋へ。こんなに体力的に余裕のある下山は初めてだけれど、やっぱり少し物足りなかった。


いつも通りかっぱ橋の周辺は観光客で溢れていて、みんなこんなところまで山にも登らずに何しに来たんだろう、って思ったりしたけど、かっぱ橋の周辺では明らかに僕の方が異端な格好をしているのでコソコソと通り過ぎた。


帰り道の途中で興奮気味のおじさんが「前にかっぱ橋から穂高を見て、あそこ行ったら何が見えるかなー、って思ったんだけどついに行けたよ!」なんて言っていて心のなかで応援した。凄くわかる。次は縦走とかしたらいいと思いますよ。

バスの予定時刻までしばらくある、と思っていたらなんと途中の道路で崩落があって通行止めになっていたらしかった。かなり時間的に余裕を持って到着していたから僕は全然困らなかったけれど、すごい行列になっていて大変そうだった。

僕が出発する頃には収まっているだろうと思い、温泉へ。こじんまりとした場所だったけれど、とても気持ちが良くてすっかり気に入った。宿泊がメインみたいだけど内装が素敵だったからいつか機会があったら泊まってみたいなー。でも、そんな機会はあと30年ぐらい来ないと思う。かっぱ橋から帝国ホテルの方に向かって3分ぐらい歩いたところを右折した建物。名前は忘れてしまった。

温泉を堪能してから戻るとバスターミナルの混乱はますます酷くなっていて、整理をしている人に詰め寄ったり窓口で怒鳴ったりしていた。あの人達は山から何を感じたんだろう。

僕は多少遅れがあったもののほぼ予定通りに出発して新島々、松本から中央線の特急あずさで新宿へ。お疲れさまでした。帰りの道中は地図の等高線を見てるだけで興奮出来て、さらに屏風岩のバリエーションとか滝谷のドーム中央陵とかのルートガイドを見るだけで大興奮で新たな性癖を手に入れた気がした。

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