2016 加須 competition ボルダリングジャパンカップ まとめ

続・考察(準決勝、決勝) - ボルダリング・ジャパンカップ2016

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BJCの興奮から早くも1週間。3月末の日本選手権までもう1ヶ月半。トップ選手達が放つ光は見ているだけでなにやら満足してしまいそうな危険な輝き。自分の中から光り輝くためには1歩ずつ歩き続けるしか無い。BJCで学んだことを忘れずに、スイッチをリードコンペに切り替えて進みます!

さて、予選の課題についてまとめていたら決勝、準決勝についても調べてみたくなったのでさらにまとめてみました。

予選についての記事はコチラ

基本的には予選同様準決勝、決勝の結果を表にして課題の難易度を考察していきたいと思います。

準決勝の考察
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全体としては1課題目と3課題目が登りやすい、2課題目と4課題目が難しいという構成。準決勝を通過するには2完登3撃以内であることに加え、ボーナス4個が10トライ以内であることでした。

また、予選は2課題、決勝は1課題完登者の出ない課題がありましたが、準決勝は全ての課題を誰かしら完登しておりセッターの目論見がばっちりハマったセットだったのではないでしょうか。

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リザルトを見てみると2完登以上している選手が13名。清水惇選手は2完登3撃でしたが2課題目、4課題目のボーナスを取ることが出来ず惜しくも進出ライン直下の7位。2完登は3撃以内に収まらなかったけれど、ボーナスを4個取た選手は5名。
逆に3課題を完登している渡部桂太・山内誠の両選手が2課題目はボーナスが取れず3完登3ボーナス。2人とも3課題目を完登した時点では実はかなり追い込まれていた、4課題目を完登するしか決勝に進出出来なかったことがわかります。

準決勝1課題目
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写真右側の緑のホールドで作られた課題。完登者は全部で15名と準決勝で最も完登された課題である反面、1撃した選手は3名と少なめ。

準決勝2課題目
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写真左側の黒いホールドで作られた課題。完登者は3名、ボーナスを取るのもとても登りにくそうにしていた選手が多かったのが印象的でした。

準決勝3課題目
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写真左側の青と黄色のホールドで作られた課題。飛び先が保持しづらくただ高く飛ぶだけでは止められない1手目をみんなあっさり止めてましたね。完登者は全部で13名、1課題目に比べると完登者数は減るものの1撃した人数は6人、特に決勝進出した6名のうち5名は一撃、藤井選手も2撃と通過した選手とそれ以外の選手のパフォーマンスの差が大きい課題。こうした普段のクライミングジムではなかなか再現しにくいタイプの課題への適応力が明暗を分ける大きなポイントになりそうです。

準決勝4課題目
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写真左の赤いホールドで作られた課題。完登者が4名おり、2課題目よりも2名多い4名が完登しています。しかし、完登した4名のうち渡部桂太・山内誠が3トライ、杉本怜・波田悠貴が5トライと非常に難しい課題だったことが想像されます。おそらく各選手最後の1課題で色々と力を振り絞っての完登だったのではないでしょうか。

続いて決勝です。

決勝の考察
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1課題目が最もやさしい(登りやすい)のは予選、準決勝と同じ傾向ですね。2課題目はセッターがやり過ぎてしまった感じでしょうか。惜しい感じのトライも散見されましたが、ボーナスを保持する人も出ず。3課題目、4課題目はどう程度の難易度でボーナスの有無、完登者数の違いは課題傾向によるものという感じでしょうか。

リザルト
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藤井選手が4課題目を完登した段階で優勝の可能性がある選手は絞られたものの、とはいえその時点でもあと2人には優勝の可能性があったわけで、最後の1トライまで目を離せない白熱した決勝戦でした。個人的には決勝1課題目の堀創選手が1手目にずーっと手こずりながらも制限時間最後のトライで完登したところがハイライト。

決勝1課題目
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完登者は6名、うち3名は1撃、2名は2撃。前日に予選、直前に準決勝を戦い抜いた上でこれぐらいはスラスラ登れないと戦えない世界。

決勝2課題目
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完登者0名、ボーナスも0名。予選から全て通して今大会の最難課題なんじゃないでしょうか。正面から見ると凹凸があるように見えますが、横から見ると絶望するほど薄っぺらい青いドーナツを押さえてボーナスを取りに行く課題。みんな左足で踏んでいるラグビーボール状のホールドで何度も足を滑らせてました。

決勝3課題目
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完登者4名。僕には全くムーブが想像出来ませんでしたが、出てくる選手が皆数トライのうちに同じ結論にいたって完登していく様は驚きました。特に山内誠選手は1トライ目から最適なムーブをしており、2トライで完登。このまま優勝するかに思われました。

決勝4課題目
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完登者は2名。最初に登場した藤井選手があっさりと2撃、このまま他選手も続くのかと思われましたが実は非常に難しい課題の一つで完登した杉本怜選手が6トライ、ボーナスを保持した山内誠・石松大晟両選手も5トライを要しました。

最後に予選から決勝までの課題を決勝に出場した選手のリザルトで比較。決勝に出場した選手はAグループ4名、Bグループ2名だったのでサンプル数に偏りがありますが、まぁそこはそういうものだと思ってみてください。
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疲労度も違えば気合の入り方も違うでしょうから一概にこれでどの課題が難しかった!優しかったというのは早計ですが、課題難易度のイメージをつかむのには役立つのではないでしょうか。例えば予選A-2と準決勝3課題目とかは全く同じ数字ですね。そしてここで気がついてしまったんですが、予選の5課題目。スラブ系の課題ですが、決勝に残った6名のうち、あの課題を完登したのは杉本怜選手ただ1人。このことが意味するのは・・・。いやいや、面白いですね。

終わりに

こうして予選、準決勝、決勝の課題を全て見てみると細かいホールド、持ちにくいホールドを保持出来るのは当たり前。その上でどれだけ大きく動けるのか。どれだけバランスが悪い状況で耐えて通常通り動き続けらえるのか。総合的な強さが求められる課題が多いように思いました。もっとカチを持って動くだけの課題とかもあって良いように思いますが、持ちにくくて遠いだけの課題とか全員できちゃうってことなのかな。

ボルダリングジャパンカップ2016は自分の選手としての5年間のキャリアの中でも最高の仕上がりの大会の一つだったと思っていますので勘違いしないで欲しいのですが、ボルダリングに限らずクライミングのコンペはやはりセッターとして招聘される人達の趣向で結果が大きく変わってしまう、悪い言い方をするならば「セッターが好みの選手を勝たせることが出来てしまう」のが大きな問題点の一つだと思います。

それを防ぐために各方面から複数のセッターが呼ばれ、大会全体としての取りまとめをする人間が別途いるわけですが、それでも1人のセッターがセットする1つの課題の傾向はその人の意向が強く通るでしょうし、意図的に偏った内容の課題を作ることもおそらく難しく無いと思います。

今回大会を通して課題の結果を考察した中で1つの課題が完登出来るかどうかの重さを改めて強く感じました。これからよりメジャー化し、参加する選手が増えていくかと思いますが、その辺りの選手とセッターとの接触、情報の管理などが課題になっていくのではないでしょうか。

ちなみに写真の一部はコンペ中かっこいい写真をこっそり撮っておいてくれると各地で評判?のSakiko Kitamuraに提供していただきました。ありがとー!

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