aもやもや

ティックマークについての僕の考え方

さて、巷で話題のティックマーク。
僕の手元にはFacebook経由で情報が流れてきたのですが、twitter上でも色々と議論が湧き上がっているみたいですね。
詳しい話は
チョークマーキングの自粛 - 豊田の岩場 [オフィシャルブログ]
を見てください。

ちょっとコメント付きでシェアしたところ、思わぬツッコミを受けて考え始めてみたら自分でもモヤモヤモヤモヤしてしまったので一度言葉に整理したいなーというのがこのエントリーのきっかけです。

豊田に1度?しか言ったことが無くて普段の状況やそこにいる人達の文化、ルール、そして今回の件がどういった意味を持つのか詳しく知らないので直接この件に関してはあまり言及する立場にないと思うのですが、「ティックマークやチョークの跡」というのは一般的にどの岩場でも話題になる事だし、先だって書いたデッド・エンドの件とも近い話なので自分のクライミング感と合わせて書いています。

0. ティックマークを引いた人が引いたままその場を去って良いか。

これに関してストレートに言うと「岩場次第」という感じでしょうか。

例えば九州の岩場なんかだとティックマークをあえて残しているそうです(記憶が定かでないので間違っていたらごめんなさい)が、今回話題になった豊田の岩場であったり東京だと御岳の岩場でティックマークをひきっぱなしにする事を良いと言う人はあまりいない、というかいないでしょう。

この時基準がどこになるかというと
a. どれぐらい人の目に触れる場所なのか
b. その岩場を開拓したクライマーコミュニティの考え方
が基準になる場合が多いんじゃないかと思います。
(あくまで僕の考えなので他の情報もきちんと調べてくださいね。あまり注意書きだらけになると読みにくすぎるので違う考え方を排斥するつもりは無いという事を頭にいれて読んでください。あと、そうではないという話があったらコメントでもメッセージでもFacebookでも、建設的な議論は大歓迎です。)

a. どれぐらい人の目に触れる場所なのか
というのはそもそもクライマーのルールを持ち出して良い場所なのかどうか、という話ですね。クライマーではない人達の方が多く使う場所だった場合世間一般の考え方として、そこらの壁や地面に落書きをしてそのまま帰る事が良いわけがないのでまずティックマークを残す事どころかチョークで手を触れた跡も出来る限り落としましょう、という事になります。
クライマーがそこらの岩に色々白い斑点や線を引いているという事が問題視されてしまうと多くの場合その岩場で登れなくなってしまうのでそれを避けるためにまずは問題にならないようにしましょうという話。

b. その岩場を開拓したクライマーコミュニティの考え方
さて、aの問題がクリアーされて、クライマーの中のルールで考えて良い場所である、となった場合にはその岩場を開拓し、管理している、もしくは実質管理している地元のクライマー達のルールが適用されます。
なのでもしこのクライマー達が「登る時はティックマークを引くべからず」というルールで登っているのであれば郷に入っては郷に従えという事で議論の余地は無いのではないでしょうか。

またティックマークを残す残さないについても
「ティックマーク残すべからず」
ならもし引いたとしても必ず可能な限り跡形もなく掃除して帰るべきだろうし、

「ティックマーク消すべからず」
ならもし少し登っている間に手や足で触れて薄くなってしまったら書き足すべきでしょう。(こちらは多分少数派というか僕はそうすべき場所を知らないですがまぁ対比として)

ネットなどで調べてみても岩場のローカルルールがよくわからない場合。
まずトポを持っているならそこに駐車場などのルールが書いてある場合が多いですし、ネットで調べてみればその管理人本人にコンタクトが取れたり、詳しい人に直接質問出来たりします。

それでも分からない場合は着いた時の状況に戻す、というのが基本なのではないでしょうか。元々無いティックマークを引いたなら消す。自分のチョーク跡が残ってしまったらならなるべく掃除する。

意外と管理している人にコンタクトを取ると色々その他の情報も教えてくれたりするので初めての岩場に行く時は一度下調べをしてみると面白いと思います。

ということで次へ。

1. ある課題を登る時にティックマークを付ける事が良いか悪いか

クライミングのDVDやネット上の動画を見ると当たり前のようにティックマークを引いている物が沢山目につきます。

少なくとも僕がクライミングを始めて物心着いた2010年頃から今までティックマークを付ける事そのものはクライマー文化として受け入れられている行為のような気がします。

なので引くことそのものを良いか悪いかでいうともうみんなやってるから良いも悪いも完全に避けるの無理じゃない?というのが僕の感覚。

その上でやっぱり是非を問うというと色々前提によって変わってきます。
「困難に立ち向かう」という観点からすれば無い方が困難だと思われるので無い方が良い。
「より高難度の課題をより早く落とす」という観点であればある方が良い。(この場合も上述の通り難度という所にティックマークの有無という観点があるとするなら無い方が良いですが、あまりそこにこだわっているという話は聞いたことが無いです)
動画作成者の立場で「見た人にホールドをわかりやすく認識してもらうため」という観点もあるかもしれません。

なのでその人がクライミングに、そしてその課題の完登に何を求めているのかという事がスタート地点であるように思います。

僕はFacebookで何の気無く「ティックマークを引くことはダサい」と書いてしまったのですが、これにはとても反省しています。ここに書いて目にされて不快に思った方に伝わるかどうかわかりませんが、すみませんでした。

2. なんのために登るのか

上記の発言をきっかけに、僕は何のために登っているのか、登ることで何を達成しようとしているのか、について改めて考えを巡らせてみました。コーチとしての観点だとまたちょっと違ってくるのですが、自分自身のクライミングに対してという視点です。

リードでもボルダーでも、外でも中でもある課題を登る時に僕の優先順位は以下です
-1 OSしたい
-2 OS出来ないならなるべくムーブ練習をせずに登りたい
-3 RPしたい

ボルダリングの場合は現実的にOSは無理だ、という事で一般に初見での完登をFLと言いますがそれでも僕はOSしたいと思っています。

でもOSしたいからといって、上からぶら下がってホールドを観察してまでOSにこだわりたいかというとそこまでこだわりたいわけではありません。なんとも、中途半端ですね。じゃあどれぐらいOSにこだわっているかなー?と思うとたいしたこと無いような気がしてきました。

そこでもうちょっと踏み込んで考えてみるとOSしたいのではなく、「なるべく情報が少ない段階でどこまでいけるかチャレンジしたい、あわよくば上に抜けたい」という事なのではないかと思い至りました。

最近の僕の行動を見て山と結びつける人はほとんどいないと思いますが、実はそもそもフリークライミングの能力を高めたい大きな理由として「山の中にあるどんな場所であっても登りたいと思った時に登れる登攀力が欲しい」というのがあります。

もちろん山なので天候の話とか体力の話とか色々な要素はあるんですが、そもそもフリークライミングの能力が無かったら行けない場所が絶対にあるはずで、そうした場所を可能な限り無くしたいという思いです。

そう考えると確かに自分の中では辻褄が合うというか、初見でどこまで登れるか、という能力を高めたいという思いが結構強いようです。

なので
「登る前に課題のムーブは知りたくない」
「登る前に登っている誰かの動きは見たくない」
「登る前に下から知りうる以外のホールドは知りたくない」
とかとか、そういう思いがあって、それを一言で人に伝えようと思うとOSという単語になるのかな。

上記のような考え方があるのでRPトライであってもティックマークが無くてもホールドを探し出す能力が欲しかったり、例え見えなくても自分の感覚でホールドを探し出して抜けていく力が欲しかったりするんじゃないかな。他人事みたいですけど(w

というのがおそらく僕の”登る”に関する根っこに近い部分の話。
もちろんそれだけが理由でクライミングをしているわけじゃないです。
友達と一緒に課題に向かう楽しさや完登した時の喜び、自分の成長を感じた時の充実、登った後のビールのおいしさなどなどなどなど、様々なものを僕はクライミングから享受しています。さらには今や生活の糧もクライミングになってしまいました。

さてと、かなりティックマークの所から話がそれてしまいまったので話を強引に戻すと、上記のような考え方があるので完登したい課題にティックマークを引いて登る、という事は僕は今はしていません。(過去にはしたことがあります)

だからといって引いてあるティックマークを消してその場で議論をぶち上げてまで自分のこだわりを押し通すつもりもありません。多くの人と好意的な人間関係を築く事は僕にとって自分の完登より大切です。

色々な考え方をしている人がいて、それが狭い岩場の中にひしめき合っているのでお互いを尊重しながら妥協できる所は妥協して、未来に良いクライミングの文化と岩場という資産を残して行きたいなーというのが僕の思いです。

直前に書いた人間関係の話ともうずれてしまうんですが、なので後は野となれ山となれ、自分が今登れればそれでいいんだ!という考え方をしている人がいるとしたらその人とは仲良くなれそうもないなぁ、とここまで書いて思いました。

というわけで上の方にも書きましたがこれが正解で考え方の全てだ!なんて言うつもりは毛頭無いです。建設的な議論は大歓迎。陰口を叩くのではなくて直接「お前は考えが浅いなぁ」と色々な意見を教えてください。

-aもやもや